工場2年、海外1年、転職の勧誘1年後

ツイッターで、TOEIC満点ホルダーで転職希望の新入社員さんらしき人を見かけました。

  • 慶應大学卒
  • TOEIC満点
  • 簿記2級
  • 海外営業を希望

何でも最低5年は工場勤務だそうで、その間は英語も簿記も必要ないとのこと。ちょっと役に立つかは分かりませんけれども、身近で見かけた例を紹介しておくことにします。

私:転職会社に狙われる

私も入社直後から、地方の巨大工場で2年ほど勤務しました。

たしかに見知らぬ地方へ配属され、おまけに自分の学生時代の知識とは全く関係ない職場です。親は脳梗塞で倒れた後だったし、その頃は不満一杯でした。

が、文句を言っていても、何も始まりません。おまけに私は英語も実用英検3級しか持っていませんでした。

まずは会社から新入社員にノルマとして課せられた英語と技術者試験を、休日返上で勉強しました。会社の仕事は朝8時から午前零時くらいまで続いていたので、休日の勉強がメインです。

もちろん歩きながらの英語ヒヤリングもやりました。激務&猛勉強に耐えることが出来たのは、若さのおかげです。

で、会社のノルマはTOEICスコア650だったところが800まで伸びて、技術者試験は2級だったところが1級に受かりました。

そうやって頑張っていると風向きが変わって来るようで、社費で海外研修に行くという話が出て来ました。当時は技術者の憧れの地だった、シリコンバレー(米国西海岸のサンフランシスコ近辺)です。

たった1年ですけれども、米国のあちこちを旅行することが出来ました。旅費はなんと、全て会社持ちです。ニューヨーク、ダラス、ボストン、アリゾナ、オクラホマ … etc.

そして、そんな私を待っていたのが「転職のおさそい」です。

帰国してから業界関係者たちが出展するイベント&展示会に参加していたら、転職エージェントさんたちに「カモ」だと思われたようです。

(戻って来てからは、首都圏の工場で仕事していました)

次から次へと、転職エージェントさんたちからお誘いを頂くことになりました。

そういや先輩でも似たような人がいて、なんと電話までかかって来たことがありました。英語で職場の共通電話にかかって来たので対応を任されましたが、その転職エージェントさんにも気に入られてしまいました。

「いやいや、私はもう英語使っていないので、あなたの言うことが理解できないんですよ」

「何をおっしゃいます。それならばどうして私と会話出来ているのですか!」

「いや、この程度など会話なんて言わないでしょ。別に技術的に詳細な内容をディスカッションしている訳でもないし」

「いえいえ、そういう言い回しを的確に出来る人は滅多にいません。ぜひ名前とメアドを!」

… なんか、漫才みたいな会話ですが、今となっては懐かしいです。

ちなみに紹介されたのはマイクロソフトだとか、外資系の一流企業さんたちでした。2年間の社会人経験があり、技術的な英語もキチンと使えるというのがポイントだったようです。

T君:営業部門から引き抜き

さて最初に配属された工場には、入社時から英語バリバリのT君がいました。

彼は営業希望でしたが、経理部へ配属されました。彼はその部署で、文句を言わずに仕事に励みました。

そういう頑張りを、本社の人事部はキチンと押さえていたようです。

ちょうど私たちが入社して3年くらいした頃、T君が国際営業部に引き抜かれたという話を聞きました。

そこでも仕事を頑張って昇進し、海外駐在などを経験したそうです。

ちなみに海外営業というのは、なかなか大変なところです。私のような技術者は下手くそな英語でも大丈夫ですけれども、営業は相手から注文を頂くための説明&交渉が必要です。

だから基本的に、アポや顧客への商品説明などは現地スタッフに任せる訳です。

彼がやるのは、ここぞという時の商談です。だからTOEIC満点は余裕で取れる彼でも、英語力不足を痛感させられるそうです。

また英語力はTOEIC満点程度を当たり前のようにクリアしていても、商談するためのビジネス知識が必要です。

工場で培った社会人経験や、経理分野の知識は大変に役立っているとのことです。

まあ私の現在の職場でも、TOEIC満点だからといって特別注目されることはありません。海外大学卒はおろか、卒業まで海外生活だったという人も数名います。それよりも事業経営に関する英作文や英会話がキチンと出来ることが重視される訳です。

ちなみに英語しかできない人は事務対応に回され、資料の翻訳や会議設定をやっています。そんなに給料も高くないです。(英語だけなら、社外へ委託すれば良いのですから)

T君は英語力など当たり前という認識で、せっせと経理を中心に自分のスキルを磨きました。数年前に部長昇格したという話を聞きました。

S君:そこの工場長に

さて最後に最も “サクセス” したのはS君だと言えるかもしれません。

彼は私と同じように英語が出来なかったけれども、勉強して社費留学しました。

行き先はカルフォルニアのスタンフォード大学です。MAを取得して帰って来ました。

留学は単なる派遣よりも “狭き門” で、私が日本に帰って来た後に渡米しました。その頃には結婚していたので、夫婦連れです。

そして元の工場に戻ってからも職務に邁進し、しばらく前に工場長となりました。

(何でも今まで相当な転職エージェントや、企業そのものからお誘いがあったらしいです)

もしかすると順調に昇進を続け、そのうちに社長になるかもしれません。これからが楽しみです。

まとめ

以上が私たち3人の、入社時から現在へ至る軌跡です。

大学を卒業したばかりの若者は、慶応大学卒業でTOEIC満点ホルダーであっても「それが何」というのがビジネス社会です。

もちろん入社したところが変な職場であれば、全力で逃げた方が良いでしょう。ただし英語や簿記とは関係ない仕事内容という程度だったら、暫く頑張って見るというのも一つです。

会社は恐ろしいところでもあります。周囲の人々がしっかりした社会人ならば、社会人力をアップするチャンスです。そしてそれが、転職時の高評価に繋がります。

どうやって自分の社会人としての商品価値を高めて、できるだけ満足した一生を送ることが最終目標でしょう。

最近は若手を指導することが多くなって来ましたけれども、ぜひ今後の活躍を期待したいです。

それでは、今回はこの辺で。ではまた。

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記事作成:四葉静