TOEIC初心者には公式問題集がオススメでない理由

TOEICスコアが800未満の人は、TOEIC公式問題集に取り組むには早過ぎます。

“ Toeic講師の神崎正哉さんの話だと、800を目指すとなると単語力もさる事ながら、公式問題集から得られるものはほとんどない水準だそうです。ここからは英語力全体の底上げでしょうね。あとは本番で取りこぼしを減らすことかと。”

私も神崎正哉先生の例文や頻出語紹介には、大変お世話になりました。神崎先生の著書には、初心者向けの良書が揃っています。

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某所で見かけた上記のコメントは、神崎正哉先生の意図を正しく伝えることが出来ていないようです。「英語力全体の底上げ」にこそTOEIC公式問題集が必要なのです。

今回は幾つかの参考例を通して、英語初心者は「公式問題集よりも初心者向け参考書」が良い理由を解説させて頂くことにします。

TOEICリーディング

まず英語に限らず人生で大切なのは、「読み書きソロバン」です。一流企業だとか大企業と呼ばれるところでも、実はキチンと出来る人は少数です。

だから薬袋先生が著書で紹介しているように、チャーチル元英国首相が頑張ったのは英作文だけだったのに、実社会では十分にそれだけで通用したという話になるのです。

読み書きができれば、話したり聞いたりすることの基礎力も養えます。逆はありません。

だから昔の大学受験では、リスニング試験など存在しませんでした。リスニングやスピーチがあったのは、実用英検やTOEICくらいです。

そして米国では日常会話はできるけれども、読み書きができない人も多いです。そういう人は、専門的な会話をすることも出来ません。

英語を学習する私たちも、読み書きする基礎が出来ていません。だから英語初心者向けの参考書が必要となるのです。

実際に大昔のTOEIC公式問題集を、少し覗いてみることにしましょう。

Note: This is an abridged version of a survey report commissioned by Hesky Foods Company on June 15.

 The purpose of this survey was to find out the reasons behind the purchasing decisions concerning four selected Hesky products. The Study was conducted on July 2 in twelve supermarkets from the Fontes, BuyWay, KTS, and MaxiDome chains. This report summarizes the results obtained during the initial survey; the study will be repeated on August 2 (results analysis due August 4). …

私の周囲では海外派遣された者は、だいたいTOEICスコア800-850くらいです。普通だったら「オレって結構できるじゃん」と自信を持てるレベルです。日常会話にも困りません。

でも… 冷静に考えてみましょう。100点満点のテストだったら、80-85点に過ぎません。TOEICは相当ハイレベルな問題も織り交ぜて基礎力を測定しますが、そんなレベルの問題は少ないです。

そりゃ実際にお目にかかるのに近い文章です。英文法、英単語、英熟語の基礎が出来ていないと、難しくて歯が立たないでしょう。何しろ幸運にも上記のような冒頭部分だけを理解すれば良いのではなく、全文を正確に理解する必要があります。

満点を取るには、理解できない文が一つでも出てきたら困ります。TOEICスコア800レベルで、このような文を体の一部のように使うのは難しいです。

だからTOEICスコアが800未満の場合には、こんな実戦形式なTOEIC公式問題集は殆ど役に立たないのです。TOEIC公式問題集は、自分が解けない部分をチェックするための問題集です。問題集と解説文で事足りるのは、ある程度の基礎が出来ている者に限定されます。

だからTOEIC公式問題集は何冊も発行されていますが、英語初心者が全てに取り組んだからと言って、スコアアップを期待するのは厳しいのです。

何しろ公式問題集がキチンと解くことができれば、あなたも既に上級者です。TOEICスコア900レベルに達することが出来るでしょう。

「スコア800以上は英語力の底上げ」というのは、ちょっと早いかもしれません。まずはTOEIC公式問題集に取り組んで、自分が理解できていない穴を埋めるのです。

英語力全体の底上げをするのは、TOEICスコア900レベルでしょうか。ムダなく早く正確に読めることが出来るように、自分で文章を即興アレンジできる段階まで鍛え上げるのです。

Googleの村上元副社長がコメントなさっていたように、「英借文」が役立つトレーニングになります。

(TOEICスコア970以上の世界は、経験したことがないので分かりません)

TOEICリスニング

さて今度はリーディング基礎があると、あまり苦労しないで済むリスニングです。

I’d like to welcome you to the Blue Water Hotel! As advertised, we offer each guest a complimentary full breakfast for every day that you spend with us; lunch and dinner are not included. Each room is equipped for Internet access. You just need to purchase a computer access card from the front desk. And remember that our special group rate includes free use of the hotel’s fitness center, swimming pool, and free tickets to one of our nightly popular music concerts.

これ、耳を鍛えるだけで聞き取れる人はスゴいです。次に何が言われるか分脈を理解しないと、私には聞き取ることが出来ません。

そもそも “As advertised, we offer each guest a complimentary full breakfast for every day that you spend with us; lunch and dinner are not included.” って、「that」の部分が瞬間的には分かりません。

「“you spend (breakfast) with us.” だから、thatになるのかなあ」というレベルです。リスニングだからといって、文型を把握せずに内容理解するのは困難です。

と、いう次第でして、英語学習の初心者がTOEICリスニング問題で英語力を鍛えるのは、少々早いように感じる時代です。

まずは初心者向け教材を

以上にようにTOEICリーディングとTOEICリスニングの双方に渡り、英語学習の初心者にはTOEIC公式問題集はオススメしにくいです。

もちろん「全ての問題が初心者向けではない」という訳ではありません。しかし初心者レベルには、少しばかり敷居の高い問題も多いです。

逆に上級者はアッサリ片付けることが出来るので、やさしい問題が多くても困る部分は少ないです。

ということでTOEIC公式問題集は初心者向けではなく、中級(スコア800-)以上向けにオススメする次第です。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:よつばせい