IT物語

[まとめ記事] SnowflakeはSalesforceを圧倒できるか

ぱくたそ素材 (滝沢洞風)

インフラIT関係者からみると、Snowflakeが今後数年をかけてSalesforceを圧倒する礎を築こうとしているように見えます。

CRMの専門家からは論点が適切でないとご指摘頂くかもしれません。大歓迎ですので、その際は宜しくお願い致します。

なお参考にした関係者記事やコメントは、次の4つです。

ServiceNow

まずSnowsflakeの第四四半期決算ですが、Revenueは前年同期比117%アップの$190.5Mでした。一方でLoss(損失)は、前年同期比139%アップの$198.9Mでした。

昨今の成長中のスタートアップ企業は拡販コストなどへの出費を惜しまない傾向があるので、まあ普通に見かける数値です。また年間売上$1BあたりがCEO交代のタイミングなので、Frank Slootman CEOへ交代したことも想定内です。

ちなみにどうして$1BあたりでCEOを交代するかというと、要求される経営手腕や経営体制が変わってくるからです。Pure Storageも$1Bのタイミングで元Ciscoのベテラン幹部にバトンタッチしました。

Snowflakeの場合に興味深いのは、交代したのがFrank Slootmanだという点です。インフラ系IT屋にはお馴染みの、自らの信念を貫くタイプの元ServiceNow CEOです。

そしてこのServiceNowですが、日本の企業の多くが採用しているITヘルプデスク支援サービスSaaSです。顧客の社内にデータ収集コンピュータを設置し、それが顧客のITシステム稼働状況に関する情報を収集します。そして障害発生した場合には、問題解決を支援します。

また過去に生じたトラブル事例もDBに蓄積しており、顧客社員向けにFAQなどを提供しています。基本的にはIaaSで、競合はHPEやBMC softwareです。

過去に両社がServiceNowを特許侵害で訴訟することもありました。(IBMは早い時期から親和路線で、Watson連携なども実現しています)

さてそのServiceNowですが、典型的な米国企業です。売上拡大する度に、ポートフォリオ拡充を目指して来ました。

人事向けヘルプデスクサービスを提供開始したり、マーケティング部門向けにもヘルプデスクサービスを開始しています。だから数年間は、将来的にSalesforceと競合することになりそうだとITインフラ勢は見ていました。

なおServiceNowは技術的な先進性よりも、信頼性が高いことで有名でした。使用しているのは実績のあるRDBで、インフラにAWSは使用していませんでした。(AWSでは99.999%の可用性はSLAにおいて保証していません)

私が数年前に定点監視していた時は、ユーザの振る舞いや特性をDeep Learning/Machine Learningさせて、それをヘルプデスクサービスなどに活用しようと試みていました。もはや現在はITSM(IT Service Management)で独占的地位を占めています。

Frank Slootman氏は、そういう企業のCEOだった訳です。SnowflakeのCEOになっても、基本的な素養は十分に保有している訳です。

Frank Slootman CEO

さてFrank Slootman氏が新CEOとなったSnowflakeは、AWS上でDWHサービスを提供するSaaSビジネスを展開しています。実行エンジンとしては、FoundationDBを採用しています。

このDBはKey Value型DBとよばれるタイプで、Appleが数年前に買収しました。少人数で開発され、OSSとしても提供されています。FoundationDBの開発にあたっては、VMwareに買収されたWavefront社が技術支援を提供しました。

こういったことがあり、Wavefrontは優遇された立場にあります。旧WavefrontであるVMware Tanzu Observabilityにしても、FoundationDBを採用しています。

おかげでVMawre Tanzu ObservabilityはTSDB(Time Series Database)として稼働します。これは全データが時刻をKeyとして保有しており、時刻を基本としたDB処理が実行されます。

このアーキテクチャ(大量データ処理機能)のおかげで、昨今のObservability製品は数秒-数十秒で異常事態に対応できるようになっています。ちなみに話題となったSolarWindsなどはMicrosoft SQL Server (RDB) で動作しています。だから迅速な対応は無理だし、収集可能なデータもサンプル収集したものに限定されています。

これはどちらが優れているかというよりも、何に使用するかが異なっているからです。TSDBは昨今のKubernetesシステムのように、カオスシステム(複雑系システム)で生じる大量データを高速処理するのに向いています。

他のObservabilityソフトウェアも同様です。ちなみに収集したデータはAWSなどに蓄積して利用するSaaSタイプが一般的です。

しかし … Frank Slootman CEOによると、SnowflakeはFoundationDBの現性能には満足していないとのことです。数秒-10秒レベルよりも一桁小さい「ミリ秒」レベルでの動作を望んでいるとのことです。

また取り扱いデータも拡充させて、音声データや動画データもSnowflakeのDWHで収集/分析できるようにすることを目指しているのだそうです。営業部隊も含めるので詳細不明ですが、2020年は800名を採用しました。そして2021年は1,200名を採用する計画とのことです。

この1,200名も1年かけてのんびりと集めるのではなく、第1四半期(2021年1月-3月)に大半を募集する計画とのことです。(数日前の決算発表なので、あと1か月で1,200名の大半を採用するといっている訳です。日本の大企業並みです)

と、いう次第で、まだ$1Bレベルのスタートアップ企業である利点を活かして、ここで製品アーキテクチャを一新する計画なのだそうです。同じようなアーキテクチャ一新は、はライバルと見做されているDatabricks(Spark&Lakehouse)も仕掛けて来ました。

このようなミリ秒単位の次世代DWHが登場すれば、従来は出来なかったことが可能になるでしょう。またSalesforceの牙城であるCRMへの進出という可能性も、技術的に見えて来る訳です。

まとめ

以上の通りでインフラIT関係者から見ると、Snowflakeは現状からコツコツ積み上げるのではなく、製品/販売の両面から徹底攻勢を取る考えを持っているように見えます。というか、Frank Slootman CEOが証券アナリスト/業界記者との電話会議で宣言しています。

なかなかチャレンジングなアプローチですけれども、だからこそFrank Slootman CEOが招聘されている訳です。その他の幹部も入れ替えが進んでおり、引き続きSnowflakeによる攻勢が続きそうです。

なおどうしてインフラIT屋が気にするかというと、機能充実の一環において、インフラIT機能部分も自前で実現する可能性がありそうだからです。と、いうか、いかにDWH分野で新機能を実現してSalesforceと競合するとしても、インフラITでの売上を放置しておくとは考えにくいです。

(別にインフラITベンダと協業してエコシステム形成している訳ではないですし、ミリ秒でのデータ収集にはインフラIT部分との連携も必要になりそうです)

と、いう訳で、引き続きSnowflakeの動向は監視しておく必要がありそうです。買収するには… ちょっと時価総額が高くなり過ぎましたね。$68Bですから。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静