IT物語

[まとめ記事] VMwareのComputational Storageは成功するか

ぱくたそ素材

インターネットに限らずコンピュータシステムというものは、サーバ、ストレージ、ネットワーク機器で構成されています。

一番目立つのがサーバコンピュータなので、「サーバが無ければ安上がりに済むだろうなあ」という考えが浮かんで来る訳です。気持ちは分かります。

ちなみに最近のストレージというのは、内蔵ディスクを山ほど搭載したサーバとも呼べるようなタイプが多いです。コントローラと呼ばれる部分がディスク群を管理する訳ですけど、正体はLinuxが稼働しているPCです。

そんな訳で、旧EMCがVMwareを買収した後に、”VM内蔵ストレージ” というのを商品化しました。普通のストレージ装置に追加料金を払えば、VMwareのVMが稼働させることが出来たのです。Pure StorageはOSSのKVMを使って、似たようなことをやっています。

これを見た部品ベンダーやスタートアップ企業たちは、「だったら私も真似してみよう」と考えて、VMが稼働するSSDだとかネットワークカード(NIC)を、”スマートXXX” として製品化しました。

今回はサーバで利用する部品関連でComputatiol Storageの動きが賑やかになっているので、そのあたりの動向を紹介させて頂くことにします。

有象無象の動向

分散システムの対極的な考え方として、「全てを一つに纏めた方が便利」という集約思考があります。その方が物理的に伝送される電気信号の距離は短くなるし、人間による管理も容易になります。

HCI (Hyper Converged Infrastructure) が代表的なシステムです。これがストレージ装置だとか、果ては部品でも何でも「纏めた方が便利」というアプローチになる訳です。

たしかにVMwareのVM (Virtual Machine) が利用するデータは近くにあった方が好都合なことも多く、「だったらストレージ装置のコントローラ部分でVMwareを動かそう」という発想になる訳です。

ただしComputational Storageには、大きな課題が存在します。それは「ソフトウェアはハードウェアのオマケで無料で使える訳はない」ということです。

ソフトウェアを開発するのだって、ハードウェアやソフトウェアに詳しい技術者がアーキテクチャを設計して、それをソースコードに落とし込む訳です。動作確認やデバックや出荷検査もやります。OSS (Open Source Software) にしても、企業から派遣されたプログラマーがOSSを開発しています。

だからお試し程度にソフトウェアを開発するのは簡単だけれども、真面目に製品化するのは大変です。ましてや製品化するからには、販売活動なども頑張って、最低でも投資した分を回収する必要があります。

まあ景気が良ければ、この手の話は進みます。まだIT技術界が平和だった2019年頃に、パブリッククラウドの高速化に対応する必要性もあり、Computational Storageは相当な注目を集めるようになりました。

もともと接続機器に追加機能を付加して、ストレージ装置などの付加価値を高める構想はありました。2019年にNetAppがA400でPensando製品を採用していますし、HPEに買収されたHCIベンダのSimpliVityも「データ圧縮処理するPCIカード」を採用していました。

そんな状況の中、本命のVMwareが2020年9月のイベントで、NVIDIAやPensandoとの協業強化を発表しました。こういった動きの影響なのか、2020年のFlash Memory Summitの最大注目はComputational Storageとなりました。

ScaleFlux、Eideticom、NGDといったところがスタートアップの注目株になります。そしてXilinxとSamsungなどの大手企業も共同戦線を張って来ました。

“XilinxとSamsung Electronicsは、11月10~12日に開催された「Flash Memory Summit Virtual Conference and Expo」にて、XilinxのFPGA搭載したSamsung SmartSSD CSD(Computational Storage Drive)を発表した。”

そしてここ数日の2020年2月末頃は、ScaleFluxのComputational Storageや、XilinxのSmart NICの発表が相次いでいる状況です。

Red HatがCentOSの開発中止を発表していますが、Red HatのベースOSというか、Linus Torvalds氏が陣頭指揮を取って開発しているFudoraやKVMを流用するアプローチです。XilinxやSumSungクラスになると採用時の販売量も多くなるので、頑張ってRed HatみたいにFudoraをComputational StorageやSmart NICに取り込もうという腹積もりです。

VMwareはNVIDIAと組んでしまったので、逆にXilinxやIntelなどのFPGAベンダと組むのは難しくなっています。Xilinxとしては、そういうところに活路を見出している訳です。

(IntelはSamsungと組まなくても一社でComputational Storageを実現可能ということもあり、今のところIntelの社内動向を捉えることは出来ていません)

本命のVMware

さて本命のVMwareです。製品化予定は未定なものの、Mroject Montereyを発表しています。

Macbookではありませんけど、今回のSmartNICにもNVIDIA子会社となったArmベースのプロセッサが搭載されています。そのNIC (Network Interface Card) でVMware ESXiのサブセットを動かす構想です。

VMware/Pensando/NVIDIAがスゴいのは、私でも欲しくなる機能を実装している点です。PensandoがCisco黄金時代を築いたチームということもあって、TCP/IP処理をNICでやってしまう設計になっています。

そしてSmartNICにはvSAN、NSX、vCenterのサブセットも搭載されています。またサーバ本体にはVMware ESXiが存在する必要はありません。つまりLinuxなどのOSが動作しているだけで、SmartNICの特性を活用することが可能です。

つまりサーバ本体は古くて低性能でも構わないし、32コアの最新マシンで「バリバリなSQL処理」などを実行させても構わない訳です。VMwareはホストOS不要で動作しますけど、逆に言えばホストOSとして組み込みLinuxを内蔵するアーキテクチャなので、どうしても “ガチな” 高負荷処理には向いていません。

そういったタイプのシステムでも、SmartNIC部分がサーバ負担を軽くしてくれるし、何よりTCP/IP部分が高速化します。どこまでユーザがニーズを見出すかは現在調査中ですが、ニーズがあれば一気に開発は進みそうです。

やはり何といってもOSSでなくて、メーカーが責任を負っているソフトウェアは信頼性などの面で優位性があります。この本命がどこまで伸びるかによって、XilinxなどのSmartNICもビジネスになるかもしれません。

ちなみにDeep Learning用のOSSソフトウェアは、現在ではFacebookやGoogleが開発者を提供しています。昔ながらのCNNは大学中心ですが、やはり高機能になって開発負荷がかかるソフトウェアほど、専門家集団が必要となって来ます。

そういう意味ではGPUもNIC部分に置いてしまうという発想は、GPUも複数で分散処理する時代ですし、大いに将来性が期待できるかもしれません。

(IntelやXilinxは実行ではコスパ良いですけど、学習ではGPUの独壇場が続くでしょう。ここら辺は、少し気になるところです)

まとめ

以上がComputatiol Storageの動向です。結局のところProject Montereyというか、Pensando社が鍵を握ることになります。そしてVMwareのCEOの判断力も試されることになるかもしれません。

私としても、引き続きProject MotereryとPensando社の動向は押さえて行くことにしたいです。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

———————-
記事作成:よつばせい