[まとめ記事] Rulerドライブ(SSD)に見る次世代型サーバ・コンピュータ
Blocks & Files誌では、2020年のFlush Memory Summit 2020における3つのテーマに注目していました。
- Computational Storage
- Ruler drive
- Smart NIC
すでに(1)と(3)は1記事で併せて取り扱いましたが、(2)には言及しませんでした。そこで今回は少々毛色が違ってハードウェア中心のRulerドライブ(SSD)を、基本的にソフトウェア屋の私が取り扱ってみたいと思います。
なおハードウェアに関してはApple信者とも呼ばれる私から見ると、相当に有望であるように見えると評価しています。
Macbookに見るストレージの変遷
ハードウェア屋さんから見ると、従来規格で各社競争した方が楽だと思うかもしれません。たとえソフトウェア的に見れば変わりなくても、”フォームファクター” とやらはシステム稼働に影響を及ぼします。
そのノウハウを早期に蓄積した者が有利となる訳ですが、ここで企業差が生じます。また生産ラインにしても、1モデルを大量生産する製造ラインの場合には、工場の改造が必要になるでしょう。
Appleは昔から多品種の少量生産という路線ですが、それでも13インチMacbook登場時は標準2.5インチSSDを採用していました。それもバッテリーと一緒に、いつでも交換可能になっていました。
ご覧の通りで、工具なしでバッテリーと2.5インチSSDを拝むことが出来ます。これが2008年に初登場したアルミニウムボディのMacbook Late 2008 (13インチ)です。
しかしAppleは翌年から、このような機構を採用中止しました。SSDやバッテリー交換するにはメモリ同様、裏側全体を工具で開くことが必要になった訳です。
そして2013年には薄型軽量なMacbook Airと同じく、独自タイプのSSDに移行しました。Macbook Airの場合だと、下記画像でオレンジ枠に囲った部分となります。
さらに12インチMacbookなどに至っては、オンボード型SSDとなりました。つまりiPhoneやiPadと同じく、SSD換装の道が完全に閉ざされた訳です。
(世の中にはオンボード(基板接着型)でもハンダごてなどを駆使して改造する強者も存在しますけど、そういった方々は超特殊ケースなので除外)
冷却問題
さてMacbookですけれども、上記のMacbook Air画像を見ると興味深いことが分かります。
それはMacbookはCPUがメインだけれども、基板全体を冷却する設計思想になっていることです。だから内蔵カメラやスピーカーマイクなどを使うようになった現在でも、安定稼働しています。
一方で他社ノートPCはCPUオンリーを冷却する設計思想で、ノートパソコンの裏側に給気口や排気口の存在するタイプが多いです。これだと長時間のビデオ会議中に、熱暴走するケースも散見されます。
(室温高めでもOKなビジネスパーソンが、日本的な長時間会議をするのは、メーカ想定外なの使用方法なのかもしれません)
サーバコンピュータにおいても、熱対策は重要です。というか、高性能CPUと大容量SSDを使用するために、デスクトップPCとは比較にならない冷却能力が必要です。
このような時、ASCII誌で紹介されている画像の通りで、縦長形状は便利です。(ちなみに本原稿を作成しているMicrosoft Surface Go 2には、SSD冷却用のヒートシンクを貼り付けていたりします)
HDDからSSDになって高速になった分、発熱量も増加している訳です。だからヒートシンクがAmazonなどで販売されている訳です。
そういう熱問題に対して、棒状になったRulerドライブは好都合な訳です。この形状であれば、冷却が容易です。必要であれば水冷式へも移行しやすいです。
私はかつて若い頃、原子力発電所の冷却パイプ部分を組み立てる現場で仕事したこともあります。その冷却パイプも縦長でした。要は空気や水の流れがあれば良い訳です。
そしてハードウェア屋さんから見ると大変でも、ソフトウェア的には困りません。それどころかSEさんなどからすると、SSD交換が容易になります。USBメモリに近い感覚で、サーバコンピュータのストレージを交換できる訳です。
そして現在はサーバストレージの時代です。必要に応じて新型の大容量SSDへ交換容易な訳です。それにサーバのCPUが1つだけだったら、そもそも停止は困難です。
サーバとしては3ノード分散構成システム等で対応する訳で、マシン台数は増える訳です。多品種の少量生産とはいえ、かなりのRulerドライブを販売することが出来そうです。
まとめ
以上の通りで、特殊な形状であること「だけ」が特長のような気もするRulerドライブですが、相当な将来性を持っていそうに見えます。
冷却性能と交換容易性(活線挿抜も可能に見える)の二点が、既存の3.5インチ/2.5インチSSDに勝るアピールポイントになる訳です。
上記記事によるとサムソンも大量生産モードへ移行しましたし、着実に売上が伸びるような気がします。引き続き、継続的にウォッチして行くことにします。
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:小野谷静 (おのせい)