[まとめ記事] low/no-codeと手堅く衰退しつつあるIBM
IBMがlow-codeアプリ開発スタートアップと協業発表しました。
一方で日本IBM山口社長は、新型コロナ対応で “盛り盛り” で根拠を明示しない発表をしました。米国も含めて、売上は継続的に縮小方向です。
ここら辺は既存ITベンダとしては他人事でなく、急にビジネス破綻することなく、安定して徐々に衰退を続けて行けることが明確になって来ました。
今回は一連の動きが、関係者にとって望ましい方法に進んでいる状況と理由を紹介させて頂くことにします。
日本IBMの記者説明
2019年5月に日本IBM社長となった山口氏が、2020年1月31日から在宅勤務を本格化したなど、驚くべき記者説明をしました。なんでも日本IBMでは2020年1月21日には危機管理チームを立ち上げ、世界状況の変化に対して、全社を挙げて迅速に対応して来たとのことです。
従来は東京・関西・中部・九州に4名必要だったエンジニアが1名で済むようになった例などを挙げ、業務改革が進んだことも紹介しています。「能力あるエンジニアが活躍できる場が増えた」とのことです。
山口社長が広報部門を振り切って発言している可能性もありますけど、そもそもこのような大胆発言をする人物が、現在の日本IBMの舵取りをしている訳です。
まず1年前に遡ると、1月31日はマスクが店頭から消えて騒ぎになった日です。私は偶然にも1月末に体調を崩して、その時は念のために職場で自主隔離していました。そして2月14日に、NTTデータがプレスリリースを発行しました。
何が言いたいかというと市場動向担当であって、不安な経験をした私でさえ、本格的に動き始めたのは2月中旬だということです。日本IBMが1月31日から在宅勤務の推奨を開始したというのは、大変な英断であると言えます。
大企業がそこまでフットワーク軽く動くのは信じがたいことです。世界中の政府も危機感を持っていなかった時期であり、IBMが対応を始めたのは3月1日からしか公開データでは確認できません。ぜひ本当にそんなに動き始めたという根拠を見せて頂きたいものです。
また4人のエンジニアが1人で済むようになったということは、会社経営では革新的なことです。先のことも併せて、ここまで見事な対応をしているIBMが、対応遅れを非難されたAWSよりも業績変化は …… 相変わらず売上減少しています。
売上拡大に繋がらないことを宣伝しても、聞く者には「あっ、そうですか。すごいですねー (棒読み)」程度にしか響きません。日本IBMの山口社長ともあろう人物が、このような記者説明をする真意は一体どこにあるのでしょうか。
このような目で見ると、興味深いことに気付きます。山口社長が日本IBMの「社員の質の低下」を象徴していると見る向きもありますけど、私には全くそのようには見えません。
山口社長は記者説明をやって売上拡大に向けた案件発掘を目指しているのではなく、それよりも「能力ある人材の獲得」を目指しているのです。
その本音が垣間見えるのが、先ほどの4人のエンジニアの例です。わざわざ「能力のある」という説明がなされています。そして現在の優秀な人材は、Googleなどが獲得してしまうご時世になっています。
東大生の青田刈りなどは有名ですけれども、優秀な人材がGoogleに流れるのは当然のことでしょう。GoogleはITベンダとしても広告会社としても、確固たる地位を築いています。日本IBMで堅実で順調に推移しているビジネスといったら、メインフレーム(&オフコン)商売くらいです。
日本IBMでの仕事を希望する就職希望者が目指すのは、メインフレーム関連ビジネスでしょう。それ以外の部分では、わざわざIBMを目指す意味が見出せません。
先日もSNSでAS/400オフコンのプログラム修正をすることになった技術者のコメントがありましたけど、「おいしい仕事だった」とのことです。オフコン用プログラムを分析して修正する能力があれば、一時間もあれば終わってしまう仕事だそうです。
しかしこのようなことが出来る人材は限られており、顧客から高額な作業費を頂戴出来るとのことです。顧客からすると最新技術を採用したシステムに移行するよりも、現在稼働しているシステムを継続運用した方がコスト的に良いこともあります。そのバランスを取ると、既存システムのメンテナンスは「おいしい仕事」となる訳です。
もちろん増設以外では、今からメインフレームで新システムを構築することは考えにくいです。だからメインフレーム関連市場は、徐々に規模縮小しつつあります。しかしオープンシステム以外の脅威はないし、今からコストバランスを崩す要因は見当たりません。つまり「安定」は大いに期待できます。
日頃は使わないプログラム言語を見て、確実に修正するには一定水準の納涼が必要です。もちろんIBMで優秀で安定を求めていた人材は、そういった方面の仕事を別会社で希望するでしょう。
だからIBMが社内の人的リソースを配分する時には、能力ある存在をメインフレームのメンテナンス方面に振り向けたいと考える訳です。
そしてIBMの有力株主である金融機関としても、IBMのメインフレームを採用していますし、急激な変化は望みません。そうやって見ると、山口社長の記者説明で紹介されている事例がいずれも金融系なのも納得できる気がします。
low-codeスタートアップ協業
さて優秀な人材をメインフレームのメンテナンス方面に振ってしまうと、オープンシステム方面にも優秀な人材を割り当てるものの、そちらは平均的には「そこそこ」の人材の集団になってしまいます。
そこそこの人材だからといって、価値がないということはありません。全員がマラドーナ並みの選手といったサッカーチームを作ろうとしたら、大変なことになってしまいます。
そこそこの能力であっても、そこそこの給料で頑張ってくれて、自動化ツールなどで大きな成果を出してくれる方が望ましいこともあります。
また物事の本質を捉えて活用できる「能力ある人材」にしても、慣れない分野のプログラミング・スキルを獲得するには一定の労力を必要とします。
そういうこともあって、昔からプログラムの再利用性を高めるモジュール化とか、オブジェクト指向言語だとか、最終的にはプログラミング・レスといったアプローチが期待されて来た訳です。
この「プログラミングの労力を減らして成果を得る」という方面の最新アプローチは、low-codeだとかno-codeというアプローチで呼ばれています。昨年頃から、スタートアップ方面の情報誌が取り上げるようになっています。
lo-code/no-codeは、従来からOracleやSAPも頑張っています。そこら辺の事情も整理して、国内でも特集記事が発行されました。
まあ前述のように、実は大昔から存在する分野です。ただしこれが昨今のAIブームによって、さらに進化が見られるようになって来たという訳です。IBMもスタートアップとの協業を発表しました。
なお上記の記事で “IBM Cloud Pak for Data Services” というキーワードがあるように、ITプラットフォーム関係者にとっても関係のある話です。プログラミングを省力化する上で、プログラムが取り扱うデータの利用方法を考えることは必須事項です。
と、いう次第で、ITプラットフォーム方面を扱うことが多い私ですが、今回はlow-code/no-codeの紹介をさせて頂いたのでした。ちなみに究極的に言い切ってしまえば、昨今のDataOpsなども、プログラム自動化が進めば無用化するでしょう。何しろ苦労してデータを収集して纏める作業も、プログラミング作業の一環と成り得ますので。
まとめ
と、いうことで、昨今のAI技術の進歩や人気に影響される形で、どうやらlo-code/no-codeプログラミングも進化しつつあるようです。なおITベンダとしては動向把握が必要ですけれども、技術者としては脅威的な存在とは感じていません。
なぜならプログラミングがどれだけ自動化されても、そもそもシステムとして何をどう処理するかという要件分析の話が存在するからです。さすがにそこまでAIが人間よりも優秀になるのは、Google予想でも2045年の話です。
その頃には、人類の在り方自体が大きく変わっているかもしれません。既存のフォン・ノイマン型コンピュータや量子コンピュータでなく、もっとも別な形態のITプラットフォームが主流になっているかもしれません。
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:よつばせい