[まとめ記事] 正念場を迎えつつある既存ITベンダ

ぱくたそ素材

2021年の1月も終わり、各社から9-12月期の四半期決算が発表されています。既存ITベンダは売上減少しつつも利益を大きくし、各社とも決算結果に大きな問題はないと説明しています。

既存ITベンダは大手インフラ系企業が取引先であるので、もっともな発表内容です。悩ましい事態は地平線の彼方にあって、これからやって来ます。

未来は私たちが変えていくものなので、これからの努力が大切なのは確かですけれども、下手すれば中高年層のリストラだけでは済まないかもしれません。

今回は経済状況に詳しくない方々向けに、おおざっぱな概況を説明させていただくことにします。

政府の知恵袋

前年ながら、私は数学は得意だけれども、経済には詳しくありません。経済に詳しい人の支援が必要です。

今回は知りたいのは政策や裏事情ではなく、実体経済の状況です。事実を的確に把握できれば良いので、内閣府に採用されている経済学者の説明に耳を傾けましょう。具体的な高橋洋一先生と田中秀臣先生です。

バイデン政権では最低賃金$15が大統領令で発布されましたけれども、果たして今後の米国がどうなっていくかは少々心配なところです。なお高橋教授も田中教授も、経済悪化による予測自殺者数の増加を懸念しています。

GDPに応じで就職率が決まり、就職率に応じて自殺者が決まります(職業の問題を抱える一定数は、困って自殺へ至る)。私の叔父の自動車修理工場も2021年4月には廃業する予定ですが、叔母が自殺未済をして入院中です。

そもそも部品交換が主流な現在、自動車の修理工場を経営するのは難しいです。ましてやEVなどの波がやって来ており、そのうえに流行り病というトドメです。

政府はこういった状況を把握しており、飲食業に限らずに経済活動の活性化を図ろうとしています。

ともかく外需が落ち込んだうえに、内需の落ち込みも激しい訳です。今や関係者の最大の関心事はワクチンの提供安定化となっています。(アフリカ系には効き目が弱いとか、実際に普及するまで安心できませんけど)

もちろんワクチンという神風だけを頼りにすることこなく、需要を掘り起こすためにアレコレと頭を捻っています。

今回の流行り病は全分野で潜在需要が弱まっている訳ではなく、特に特定業種にダメージが集中する傾向があります。もちろん日立および(ITプロ)内でもここら辺の事情は承知しており、各分野の経済状況の把握も進んでいます。

好調なITベンダ

さてITベンダは一般的な傾向として、強気な見通しを示しています。IR的には特に明確な不安要素が見当たらないわけで、各社の発表内容は妥当です。

ただし… 今回の流行り病はリーマンショックと大きく異なる点があります。それは需要の急激な落ち込みです。そして回復見通しは、今のところ明確になっていないことです。

もともと既存ITベンダが取引する顧客は、インフラ系の大手企業が多いです。予算を立てて、それに応じて注文を出します。つまり2020年から2021年前半にかけては、あらかじめ発注することは計画済みだった訳です。

だから基本的に受注状況は変わりません。一時的には在宅シフトへの予算外流用などが発生し、受注量が増えるベンダも存在しています。そして在宅勤務を始めとする業務見直しにより、オペレーションの効率化が図られました。

したがってAWS、Azure、GCPを始めとして売上拡大という現象も起こっている訳です。ただしこれは企業の運営形態への一時的な対応であり、「流行りやまい景気」とでも呼べる存在です。

ただし経済全般の停滞、特に中小企業の不活発化は、徐々にインフラ系の大企業にも波及して行きます。自然界でプランクトンの発生が収まると、最終的にはマグロなどの食べる魚がいなくなってしまうようなものです。

ちなみにマグロ1kgを取るのに、サバ25kgが必要となります。

現在は雇用調整金や給付金などの政府主導の財政出動によって、大企業への影響は抑えられています。しかし経済あっての大企業であり、中小企業の不調から無縁ではいられません。米国では社会が大変な状況となっており、新大統領が提唱するような財政出動はインフレを招きかねないと心配されています。

インフレが起これば給料は変わらなくても、実質的に所得は下がる訳です。これから既存ITベンダにも影響が生じる可能性は無視できません。

強気なITベンダ

一方でIBMなどは強気な発表をしています。

アジャイル系の開発部門は従来300件の対応が1,500件に増えているとのことです。リモート環境をフル活用する術を身に着け、流行のワールームやChatOpsなども積極導入しているとのことです。

そして英国ではVW傘下のAudiに関して、オンラインでの相談件数が前年同期比で59%増とのことです。それでソリューションとしては好調な業績を叩き出しているとのことです。

また在宅勤務の普及により、VDI環境の充実が必要となっています。こういったベンダの勢いを背景として、ガートナーでは2021年は前年比6.1%増の成長を予想していることです。

2020年は時間が経過するにつれてマイナス3% → マイナス5% → マイナス8%と成長率を引き下げていましたが、2021年は強気な数字を打ち出して来ました。

ガートナーにしてみれば、顧客へのヒヤリング状況や受注状況を踏まえての判断です。現時点では、この強気な予想はもっともな内容であると評価できます。

ITはサービス業

ただしここで気をつけておいた方が良い点があります。それは「ITは本質的にサービス業」という点です。

現時点では政府政策により、株価は流行り病など関係ない状況です。実体経済と株価(企業価値)は乖離したものとなっています。

そして鉄道や電気/ガスと異なり、ITは人々が直接利用するものではありません。あくまで何かをやりたい時に、それを支援する道具に過ぎません。

10年前の時点では、スキ屋の牛丼の売上はMicrosoft Excelで計算されていました。いや、正確さを捨てるならば、筆算でも構わない訳です。

IT機器やソフトウェアは、それだけでは「ただの箱」です。今では情報は立派な武器ですけれども、武力や … まして金銭といった力には及びません。

だからIBMなどが強気な主張をするのは悪くないことですが、それを素直に鵜呑みにするのは危険です。

たしかに昨今の状況ではVW子会社のAudiへのオンライン製品問い合わせが減少することはないでしょうけれども、それが売上に直結されるとは限りません。

IBMの顧客エンゲージメントの5倍増は素晴らしいですが、少なくともIBMの売上増には結びついていません。昔からこの手の話は何度も聞いてきたので、ぜひ売上金額という数字で語って貰えると嬉しいところです。(部門レベルでなく、全社レベルで)

まとめ

以上のように、AWSなどの華々しいところにだけ目を奪われていると、足元をすくわれることになりかねません。実は既存ITベンダは、長期的に見ると正念場を迎えつつあります。

特に既存ITベンダは今まで培った伝統や文化があるので、どうしても動き方が慎重になります。それは現在のように事態が加速する状況下では、マイナスに働くリスクがあります。

某所では各産業の動向を抑えようという動きを見かけますが、まさにその通りです。これから競争が一層激化することが予想されるので、既存ITベンダなりに最善の手を打つ必要があります。

と、いう状況であるので、仕事で忙しいからとIT業界にだけ携わっているのは得策とはいえません。

このご時世だから客先へ伺うなどの提案はできませんけど、大学や高校時代の知人とオンライン飲み会を久しぶりにやってみるとか、なるべく視野を広く保つことをやっておくと良さそうな気がします。

そして若いうちは時間不足で大変かと思います。ベテラン勢は若手の勉強時間を増やすべく、思いつく手は打っておくのが良いかと思います。

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記事作成: よつばせい