IT物語

[まとめ記事] GCP (Google Cloud Platform) の将来性

ぱくたそ素材

GCPの決算発表がありましたけれども、一部の素人記者が赤字額が大きいと騒いでいます。

最近は記者といっても特別な素質、能力、経験を持っている訳ではないので、どうしても個人差が生じます。おまけに最近は、意図的に偏向した報道も散見されます。

確かにGCPの将来動向がどうなるかは要注目なんですけれども、売上額や赤字金額だけに注目するのは間抜けな話です。

そこで今回は、GCPのどうして売上額や赤字だけでは済まないのか、その仕掛けを紹介させて頂くことにします。

(AWSとは異なり、ハイリスク/ハイリターン型ビジネスとローリスク/ローリターン型ビジネスのハイブリッド型の展開を仕掛けようと、最近になって挑戦開始している段階です)

GCP基本モデル

Google売上の8割は広告収入です。そのうちの8割程度が、検索エンジンを利用した広告収入です。

検索エンジンの利用者に結果表示する際、広告も貼り付けて表示する訳です。その広告がクリックして閲覧されたら、Googleには一定金額が入る訳です。

どの広告主の広告を紹介するかとか、広告の見せ方はGoogleが仕切ることが多いです。YouTubeやWebサイトの固定広告も同様です。

Googleは検索エンジンの継続的な改善に、多数のデータセンタを利用しています。そのためにMicrosoftでさえ、今のところ追いつく見通しがない段階まで差がついています。

また広告表示や成約支援、さらには広告主へ売り込みに関しても、多数のデータセンタを利用しています。こういった巨大ITシステムを活用して、Googleは第四次AI技術(Deep Learning)を実用化しました。(“猫の画像認識” でも、2,000台に及ぶサーバを投入しました)

なおGoogleの基本的なビジネスモデルは、「イノベーションによって新たな価値を生み出し、その派生物から対価を得る」です。そのイノベーションを実現するために、優秀な人材を積極採用しています。

「東大生の青田刈り」は有名です。私もAmazonやMicrosoftならば転職のお誘いを頂いたことはありますけど、Googleは全くありません。入社したとしても、働き続けることが出来るという自信もありません。

さて以上のようなGoogleですが、AWSやAzureに遅れてクラウド市場への参入を決意しました。競合厳しいクラウドの世界でシェアを得るための武器は、CEOによると「AI」です。

ちなみに当初のGoogleは、エンタープライズ向けクラウドは対象市場ではありませんでした。そういう次元ではなく、Big Data分析といった「技術的に尖った市場」を狙っていました。

そういう訳でBig QueryなどではAWS/Azureには負けないものの、「Big QueryだけはGCPを使う」という案件パターンが多かったです。そのままではAWSやAzureに売上金額で差が付き過ぎて、研究開発費で勝てなくなってしまうかもしれません。継続的なイノベーション競争に資金力は欠かせません。

そこでGoogleはVMware元CEOからOracle元幹部にGCPトップを交代させ、2019年に戦略転換を図ることにしました。

ローリスク・ローリターン活用

さてGCPが戦略展開を図っていっても、自社の強みや弱みは変わりません。資金面で問題がある訳ではないし、従来から進めて来たことは踏襲しています。

従来と異なるのは、エンタープライズビジネス強化のためにエンタープライズ営業を雇用して販売部隊を組織し、さらにAIの土台となる計算資源ではNVIDIAも積極採用するという点です。(今までエンタープライズITビジネスをやって来なかったのだから、組織強化ではなくて組織新設に近いです)

エンタープライズの経験者を雇用し、エンタープライズ事業を立ち上げるというのは「世間的には常識的な考え方 (Googleとしては斬新的) 」です。ローリスク・ローリターン型ビジネスとも言えます。

ただし技術最優先の尖った企業が、いきなりエンタープライズビジネスを立ち上げるのは数年がかりの仕事になります。2020年のGoogleイベントでは、「なんかエンタープライズ企業っぽいアプローチも見えて来た」とのことです。

“一方、今回のイベントで目立ったのは、「エンタープライズっぽい」、あるいは「Googleらしくない」サービスだ。Google Cloudはこれまで「攻めのIT」や「デジタル変革」に向けたメッセージが目立ち、企業の既存業務システムに関する取り組みはあまり見られなかった。見られたとしても、例えばオンプレミスでGCPと連動するコンテナ環境を構築し、GCPによる管理に任せることのできる「Anthos」を活用し、コンテナ化を通じた既存の業務システムのモダナイゼーションをしようというメッセージだった。”

ちなみに上記の記事でも紹介されているように、最近は元GCP CEOがVMware CEOだったことあるおかげか、VMware協業も進んでいます。既存ITベンダがGoogleのデータセンタに吃驚したという噂も聞きますけど、いかにも「ありそう」な話です。

なお私から見ても、それなりにGCPはエンタープライズビジネス向け施策を幾つも打ち出しており、それは無駄には終わらず、それなりの成果は上げているように見えます。年間売上成長率でも、No.1です。

ただし成長率が高いといっても、AWSやAzureの売上規模は数倍です。「たまたまの偶然」とも言える売上規模であり、AWSやAzureに追いつける日が来たとしても、まだまだ最低数年以上は必要になる長期的ストーリーです。(“We think it will take many years for BABA and GCP to close that gap on the two leaders.”)

このような状況で先行ベンダに追いつく気があるならば、赤字は気にせずに積極投資する勇気が必要です。また資金に余裕のある企業だから、多額の資金を必要とするハイブリッド戦略を採用するのも妥当であるように見えます。

またNVIDA GPU活用では先行するDatabricks(Snowflake競合)との協業も発表しています。

GoogleはTPU (TensorFlow Processor Unit) を独自開発していますが、それだけに頼るような甘さは微塵もありません。ともかく売上金額の差は絶対的であり、Googleとしては放置できないと認識している訳です。Googleにとって3年間で数兆円程度の赤字などは、大した問題ではないのです。

なお少し話は逸れますけど、公開企業として大切なのは「株主の評価(株価)」= 時価総額です。時価総額が高くないと金融機関からの資金調達でマイナス影響が出ますし、そもそも経営陣が株主から追放されてしまいます。

そのような株主目線で見ると、GCPの赤字は全く問題ではないのです。ソフトバンクなどは一兆円の赤字を発表した後、数日前には三兆円の黒字を発表しました。日本企業初の黒字規模ですが、これは株を買収した企業の株価が上昇したからです。

Googleの件は投資と売上の話ですけど、つまり「技術」に対する評価が今までとは異なる時代になっている訳です。そういうことを知らない不勉強な雑誌記者たちは、あれこれとGoogleの赤字を騒ぐ訳です。

まとめ

以上がGoogleのGCP決算発表に関して、留意すべきことです。もちろん年間売上や赤字は重要ですけれども、それがGoogleとして計算通りのシナリオであるのかといった点まで含めて分析評価することが大切です。

なお世間一般では騒ぎになった方が面白いという面もあり、基本的には「騒動モード」になっています。ただしSiliconAngle誌や@IT誌だけでなく、GCPをウォッチしている人は冷静です。

“そういう意味では収益の成長率が市場平均を大幅に上回ってるし今後の成長可能性もあるよ、というのは普通に良いニュースなんじゃないかと思いました。”

なお既存ベンダにしてもクラウドに注力しているところは、良い結果が出つつあるようです。これらのベンダにしても、MicrosoftのAzureと同じ頃から頑張って来て、その成果が出ていると言えるのかもしれません。

ある意味で今回のGoogle赤字騒動は、その反応によって雑誌記者などの力量を測るのに役立つかもしれません。

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記事作成: よつばせい